経産省 、ブロックチェーン技術の適用可能性について調査|学位・履修履歴、研究をテーマに
経済産業省は、平成30年度産業技術調査事業(国内外の人材流動化促進や研究成果の信頼性確保等に向けた大学・研究機関へのブロックチェーン技術の適用及びその標準獲得に関する調査)の調査報告を取りまとめたことを発表しました。
調査は、「学位・履修履歴証明」及び「研究データの信頼性の担保」の2テーマについて、勉強会における検討と公開型のハッカソン開催を通じて、ブロックチェーン技術の適用可能性を明らかにすることを目的に実施されており、背景としてそれぞれ「急速な技術革新を背景とし人材流動化を前提とした学習履歴・学位の真正性確保が求められる時代」と「研究データ等の不正に関する状況(研究機関・企業)からデータの真正性が求められる時代」が挙げられています。
いずれのテーマもブロックチェーンを用いてデータの透明性とトレーサビリティの確保、改ざん防止を行い、真正性を担保することを目的としており、それぞれのテーマにおける技術適用可能性としては次のように総論としてまとめられています。
「学位・履修履歴証明」
- 既存の仕組みでは困難である「発行者が不在となった場合に、その発行者によって過去に発行された証明書を正しく検証すること」において適用が可能であると考えられる。
- ハッカソンにおいて複数のチームが取り上げたDID(分散型ID)に関係する取組については、秘密鍵の管理等の課題はあるものの、ユーザー自身によって自身のアイデンティティを管理する今までにない仕組みであり、適用可能性について継続的な議論が必要になると考えらえる。
「研究データの信頼性の担保」
- 国内外の一部組織においては、信頼性がある程度確保された中央集権的なシステムが稼働しているが、そのシステムがコスト優位性をもって正常に機能している限り、ブロックチェーン技術を無理に適用する必要はないと考えられる。
- ハッカソンでは、現状中央集権的なデータベースが存在しない、研究活動の「解析工程」に着目したプロジェクトが存在したが、同様に研究活動におけるその他の工程における適用可能性について継続的な議論が必要になると考えら れる。
「学位・履修履歴証明」をテーマとした個人の履歴を取り扱う手段としては大学などがなくなる場合もあるので適用に肯定的で、「研究データの信頼性の担保」をテーマとした研究の信頼性を担保する手段としては、既存の中央集権的なシステムで信頼性が担保され、コスト面での優位性が出ているまでは適用を見送る姿勢であることがわかります。また報告書のポイントとして次のようにまとめられています。
ブロックチェーン技術は発展途上の技術ですが、要件によってさまざまな適用例が考えられます。学位・履修履歴においては、「発行者が不在となった場合に、その発行者によって過去に発行された証明書を正しく検証すること」、研究データにおいては、「解析工程をはじめその他の工程における適用可能性」が考えられます。
海外においても複数の適用事例が生まれてきている中、本調査を通じて明らかになった課題をもとに、今回のように実証実験ができるハッカソンのような場やブロックチェーン技術の標準化に貢献できる環境整備への取組が、引き続き必要と考えます。