なぜTether(テザー)問題は深刻なのか?|公式は3月にドルでの裏付けがないことを認めていた?

なぜTether(テザー)問題は深刻なのか?|公式は3月に米ドルでの裏付けがないことを認めていた?

4月30日にTether(テザー)社と取引所Bitfinexの顧問弁護士Stuart Hoegner氏が「USDTの74%しか米ドルで裏付けされていない」ということをニューヨーク司法長官(NYAG)に対する宣誓供述書で明らかにしたことで、Tether社の発行するドルの価格にペッグ(連動)しているステーブルコインUSDTについての問題と疑惑が再度浮上しています。

仮想通貨業界の歴史をある程度知っている投資家を始めとするユーザは、通称「テザー問題」と言われている米ドルでの裏付けがない問題が、仮想通貨市場にどういった影響を及ぼすのかある程度知っていますが、マネックスのオンラインセミナーでも触れられていたように、2018年の12月に日本での仮想通貨に投資する人が増えているということもあり、仮想通貨に投資する以上避けては通れない問題でもある「テザー問題」が、なぜニュースに取り扱われ、深刻な問題として取り上げられているかを含めて説明します。

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なぜテザー問題は深刻か?

まずテザー問題はなぜ深刻かということですが、これはTether(USDT)新規発行の仕組みと、テザー社がbitfinex取引所を介し、USDTを新規発行したのちにBitcoin(ビットコイン)を始めとする仮想通貨を買い付けて市場全体の価格を上昇させているという通称「テザー砲」と呼ばれる資金の流れにあります。

USDTの発行はProof of Reserves(プルーフ オブ リザーブ)という仕組みで行われており、ユーザがTether Limited社の保有に法定通貨を入金すると、同額のUSDTが新規に発行され、逆にユーザがTether Limited社にUSDTを入金すると同額のUSDTは消滅し法定通貨が返金されます。こうすることで、Tether Limited社に入金された法定通貨は発行されたUSDTと常に同額となるように維持され、米ドルの価格に理論上ペッグします。

今回の米ドルでの裏付けがない問題はこの仕組みをいわば守れていないことになります。なぜならもし仮に全てのUSDTを法定通貨に変えようとした場合、返金されない恐れが出てきます。

つまり極端な話、価格の裏付けが全くない状態でUSDTの新規発行が行われているとすれば、テザー社は好きなだけUSDTを新規発行したのち、好きなだけ仮想通貨を買い付けて「テザー砲」を行なうことができます、そうすると仮想通貨の価格はただテザー社が無理やり価格を釣り上げただけのものであるという危険性を孕んでいるのです。

そしてこの疑惑のある「テザー砲」が価格の上昇に大きく貢献している点が注目すべきポイントになります。上昇させている金額がマーケット全体を考慮した時に無視できるほどならば、テザーの疑惑が本当だったとしてもマーケット全体に与えるダメージも限定的になりますが、テザーレポート によると「TetherはBitcoinが下落したときに新規発行される傾向があり、TetherはBitcoinの価格上昇のほぼ半分を占める可能性があります。」という調査結果もあります。

そしてこれらの特徴を有するが故に、「テザー問題」や「テザー疑惑」と呼ばれる問題や疑惑がニュースなどで取り扱われると4月末にもBitcoinが60万円代から50万円代まで下落したように、仮想通貨市場全体への信頼が揺らぎ、価格の暴落を引き起こすトリガーとなります。これは価格を下げるので通称「逆テザー砲」と呼ばれており、このようなテザーに関する疑惑がメディアなどで取り沙汰されるたびにBitcoinを始めとする仮想通貨は価格をしばしば下げてきました。

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公式は3月に米ドルでの裏付けがないことを認めていた?

「USDTの74%しか米ドルで裏付けされていない」というニュースが報道されましたが、3月15日のコインテレグラフのニュースにもあるように公式サイトでは、3月14日にすでにUSDTは米ドルでの価格裏付けがないことを事実上認めており、USDTは伝統的な通貨やその他の資産などの準備金に裏付けられていることが記述されています。つまりニューヨーク司法長官に対する宣誓供述書で明らかになる一ヶ月以上前から米ドルでの裏付けがないことは明らかになっていました。今回のニュースでは裏付け金額の具体的な数値が報道された形となります。

テザー公式サイト:https://tether.to/

簡単にFUDになるテザー問題

前述の通りテザー問題は、その仕組みと影響力故に、簡単にFUD(Fear, Uncertainty and Doubt/恐怖、不安、疑念)と呼ばれる大衆の心理の不安感を煽ることができ、仮想通貨市場と価格への影響力が少なからず存在することが言えます。

公式は3月から米ドルでの裏付けがなかったことを認めていましたが、裏付け金の不正疑惑の報道や宣誓供述書によりUSDTが74%しか米ドルで裏付けされていないことが明らかになり、仮想通貨の価格は下落しました。

避けては通れないテザー問題

仮想通貨に投資する以上、テザー問題が避けては通れない業界全体の問題であることが言えると思います。テザー問題の根本的な解決がいつの日か行われることが一番理想的ですが、いつまでもそんな日はこない可能性もあります。では、個人投資家として急にやってくるテザー問題のFUDにどのような対策を行うかということが重要になります。

まずリスク対策するというよりリスク回避する手段になりますがボラティリティと呼ばれる価格変動のある仮想通貨にそもそも投資をしないことが挙げられます。そして投資をするのであれば日本の取引所ならば逆指値を使うことや、クジラと呼ばれる大口の動きを監視することで急激な価格変動へのリスク対策を行うことが挙げられます。

海外の取引所を利用するならば、米ドルにペッグしたステーブルコインは何も疑惑のあるUSDTだけではありません、例えば大手取引所のBinance(バイナンス)ではTUSD, USDC, USDS, PAXなどの各種ステーブルコインが取引所に上場しているので、そちらを利用するなどの対策が可能です。

ブロックチェーン技術と仮想通貨市場は急激に発展しており、魅力的な投資先としても考えられますが、一方でまだまだリスクの大きい市場であることは否定できません。リスク管理は投資という活動をする以上当たり前かもしれませんが、テザー問題が取り上げられるたび個人がどのような対策をとるかや、様々な情報を入手するときの心構えを考え直すきっかけになるのではないでしょうか、今後も仮想通貨市場とテザー問題を取り巻く環境には注意が必要です。